筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

 このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。


校長室から

からだを診る、こころにふれる ―ALSの方々との出会いから学ぶ―

 本校理学療法科では、授業の一環として、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の皆さまをお招きし、交流会を行いました。
 ALSは、体を動かす神経が少しずつ機能を失っていく病気ですが、意識や思考はしっかりと保たれています。
ALSの方々にインタビュー1  当日は、私から「ALS支援と視覚障害教育は、領域こそ異なりますが、どちらも“人の可能性を最大限に引き出す”教育と支援という共通の理念をもっている」。あわせて、「人を支えるとは、その人の生き方に敬意をもち、寄り添うこと」でもあるなどALS患者の方々やご家族の方々にご挨拶する機会をいただきました。

 コミュニケーション能力を高める一環として、1年生がALSの方々にインタビューを行いました。 スマートフォンやコミュニケーションボードなど、それぞれの方のコミュニケーション手段に応じて、一つ一つの言葉を丁寧に受けとめながらツールを使ってやりとりしました。 
ALSの方々にインタビュー2  「最近ハマっていることは?」という問いに、自ら声を出せなくても、ツールを通して「YouTubeで旅の動画を見ること。旅に出た気分になれるんです」、「ラーメンを食べることですね」といった答えが返ってきました。 笑顔が交わされる中で、生徒たちは、「言葉以上に大切な思いの伝え方」を感じ取っていました。

 2年生、3年生は、評価体験を通して、ALSの方の感覚や反応を確かめる学びを行いました。
 刷毛を使い、「触れたら目を開けてください」と声をかけながら、わずかな表情や動きに集中する姿が印象的でした。
評価体験の様子  一人一人が相手の呼吸やまなざしに寄り添い、「伝わる」という瞬間を大切にしている様子に、頼もしさを感じました。
 今回の交流は、理学療法士を目指す生徒にとって、「身体を診る」だけでなく、「人の心と生き方を理解する」ことの大切さを実感する貴重な機会と、当初の期待通りの交流がきたと感じることができました。
 ALSの患者様及びご家族の方々、日本ALS協会の皆さまからいただいた温かな時間と学びに、心より感謝申し上げます。


令和7年11月4日 筑波大学附属視覚特別支援学校 校長 森田 浩司

校長室から バックナンバー

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2025年度
2025年 4月4日「着任の挨拶・学校教育の方向性について・学校としての決意」
2025年 4月18日「新しい生活のスタートで学んだ “生きる力” 〜地域とともに、生徒たちとともに〜」
2025年 5月7日「地域に支えられて~放課後等デイサービス事業所との連携~」
2025年 5月23日「理学療法科の授業に協力して:社会に生きる力を育む実践の場」
2025年 6月2日「地元・大阪で輝いたその一蹴——ブラインドサッカー国際大会 優勝の報告」
2025年 6月23日「沖縄慰霊の日に寄せて ~平和を考える給食時間~」
2025年 7月7日「理学療法士国家試験における合理的配慮について ~視覚障害のある受験生のために~」
2025年 7月25日「足元の自然に耳をすませて~飯盛山登山に代わる自然観察から~」
2025年 8月5日「自立へつながるキャンパス体験~「支援を受ける側」から「支援を活かす側」へ~」
2025年 8月21日「視覚障害教育への熱きまなざし ~ それぞれの夏季研修の始まり ~」
2025年 9月2日「「準備は裏切らない!」——全国大会 優勝、そして次の挑戦へ!」
2025年 9月25日「音楽に込めた想い ―音楽科3年生の挑戦」
2025年 10月7日「未来の教師たちとともに ~自立活動の重みを伝えて~」
2025年 10月29日「あふれる二人羽織 ~視覚障害教育の基本~」

2025/11/4