筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

 このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。


2月の校長室から

 「2月の校長室から」をお読みくださり、ありがとうございます。 新年から早ひと月。お読みくださっている皆さまが、健やかに新年のスタートを切れていることと存じます。
 本校では1月第3週は入試週間でした。各部・科が順番に行うことから、準備・実施・合否判定を含めて1週間の長丁場となります。受験生の将来を左右しかねない入試でにおいて失敗は許されません。先生方は細心の注意を払って業務を遂行してくださいました。事故なく終えホッとしているとことです。次の大きな全校行事は卒業式。御承知のように学校最大イベントです。3月15日に向けてすでに準備が始まっています。

 少し早い話題ですが、卒業式について書き留めます。卒業式の主役はもちろん、卒業生たちです。しかし、私は少し異なる視点から卒業式を考えることがあります。初めて卒業学年を担任したときのことです。式典が終わった後、ある保護者さんが挨拶に来てくださいました。
 「青木先生、ありがとうございました。あの子が校長先生から卒業証書を受け取る姿を見て、障害を持って生まれてきたときのことを思い出し、涙が止まりませんでした。医師から『この子の人生は短いかもしれない』と言われ、絶望しか感じられませんでした。そんなあの子が学校を卒業できるなんて、親として嬉しくてたまりません。頑張って育ててきて、本当に良かったです。あの子、どんな顔で卒業証書をもらっていましたか。」確か、このような内容でした。担任席にいた私からはその子の表情を見ることはできませんでしたが、私はこう答えました。「自信に満ちた表情でしたよ。」 その時の保護者さんの幸せそうな表情を今でもはっきりと覚えています。

 特別支援学校においても、卒業式の主役は卒業生たちです。しかし、もう一人忘れてはならない主役がいます。それは保護者の方々です。お子さんに障害があると知った時の衝撃を乗り越え、さまざまな困難や試練に立ち向かいながら、支え続けてこられました。障害のある子どもたちの生活や学びの道のりは、決して平坦ではありません。それでも、子どもたちを慈しみ、可能性を信じ、一歩ずつ前進してこられたのです。
 卒業式は、そんな保護者の皆さんの努力と愛情が実を結ぶ日でもあります。我が子の成長を誇りに思い、それまでの苦労が報われる、感慨深い瞬間を迎えるのです。その瞬間を、私たちは大切にして差し上げたいと思います。
 「あの子、どんな顔で卒業証書をもらっていましたか。」この言葉が思い出されます。
 本校を卒業する生徒たちの保護者の皆さんが、我が子の晴れ舞台を瞼に焼きつけ、心に刻み込めるようにして差し上げたいと思っています。卒業生の旅立ちを祝うとともに、保護者の方々の歩みをたたえる。それが、卒業式の意義をより深めるものになるのではないでしょうか。


令和7年2月1日
筑波大学附属視覚特別支援学校
校長 青木 隆一

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