(1)図書館(図書室)のあゆみ
1978年(昭和53年)3月に東京教育大学が閉学するまで、本校の図書室は、大学の図書分室として位置付けられ、東京教育大学教育学部雑司ヶ谷分校図書分室がその正式名称であった。この時代の図書室は、教員のための研究図書館としての性格が強かった。
1978年4月に筑波大学が開学すると、図書室は大学からは切り離された形になった。暫定的に筑波大学雑司ヶ谷図書室という名称を用いたが、後に筑波大学附属盲学校図書室と称し、現在に至っている。
名称変更以前から、学内に、学校図書館としての機能への要望が強まっていたことから、閉架中心から開架式へ、分類は東京盲学校時代の図書分類から一般的な日本十進分類法へと変更された。また、目録の整備、児童・生徒向け資料の充実などが検討された。
司書教諭の必要性も次第に認識されるようになり、20年にわたる要求の末、1993年(平成5年)7月に初めての司書教諭が採用され、生徒指導にあたっている。司書教諭、小・中・高・専攻科各部の代表からなる図書館運営委員会が運営にあたり、おもに予算について審議している。
(2)本校図書室の特徴
- 開架式(一部閉架式)。
- 資料の分類は日本十進分類法(NDC)による。
- 墨字図書についても点字で書名等の表示をしている。
- セルフサービス方式による貸し出し。
盲学校の図書室の特徴は、資料の形態にある。一般の図書館のように、市販
の墨字(普通文字)図書を集めるだけでなく、点字図書、録音図書、拡大文字図
書、さわる絵本など多岐にわたる製作図書が欠かせない。その製作は多くのボ
ランティアによって支えられている。
情報障害といわれる視覚障害者にとって、図書館を活用する能力を身に付けることは健常者以上に重要なことである。盲学校での指導は個別に指導する時間が多く必要になること、視覚障害者をとりまく読書環境がまだまだ不十分であることなどとあわせて、盲学校においては司書教諭の役割は普通校以上に重要である。教科と連携した資料整備、利用指導、読書相談、参考調査、館間貸し出し業務、情報機器の利用指導など、幼稚部から専攻科までの多様な生徒が在籍する本校では複数の司書教諭が必要であり、増員を要求している。また、予算や図書室のスペースの不足は慢性的に解消されていない問題である。
(3)施設・設備
- 総面積295平方メートル
- 小学部図書室(1階)
主に幼小学部児童を対象とし、図書書館利用教育の場。点字図書、録音図書、拡大図書のほか、さわる絵本などの蔵書も多くある。 - 中高図書室(2階)
主に中・高等部生を対象とし、参考図書室と併せて、図書館利用教育の場及び自習室。 - 参考図書室(2階)
- 専攻科図書室(4階)
理療・理学療法関係資料及び特殊教育関係資料の専門図書館、1階、2階及び校外図書館等を結ぶ校内中央図書館。自習室。 - 対面朗読室(2階・4階)
- 司書室(4階)
蔵書
点字資料は、購入または墨字資料をもとに点訳をボランティアに依頼している。点訳ネットワークの普及により、既に点訳済みの資料の検索やデータのダウンロードが活用できるようになった。また利用率を向上させるために、以下のエ夫を加えている。
- 点字資料の原本となる墨字資料を備える。(欠本が出た場合にそれを補 う必要があるため)
- 資料のディスク化を行う。
- 利用率の低下した資料は調査の上で、新しい資料との交換をこころがけ る。(触読される点字資料は、点がつぶれたり用紙がけばだつなどすると 利用度が低下するため)
- 墨字資料も点字使用者が利用できるように、表紙の左右にNDCの分類と、タイトル及び著者名をタックシールを利用して貼布する。
- 点訳及び音訳が済んだ墨字資料については、それが書架上でも確認できるように、ラベルの下に点字は赤色でT、録音は青色でRの印を付ける。
学校図書館の設備や図書の基準は、学校図書館法で定められている。しかしそれを、盲学校の図書館に適応するには、さまざまな問題がある。資料の形態が多様であり、配架スペースも多く必要となる中で、生徒数を基にした図書の冊数や設備の数値は実情に合わないものである。
本校では、学校図書館としての機能を果たすために備える図書資料は、まず第1に生徒の要求を保障するものとし、その他は、利用度に応じて他の点字図書館や公立図書館などとの館間貸し出しを利用して要望に応えている。
弱視者への対応については、図書室に拡大読書機を置いたり、大活字の辞書を備えるほか、出版された大活字本を購入したりしている。しかし全般的に対策は遅れており、今後の大きな課題となっている。
図書館だより
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【2021年度】