このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
校長室から
人を支える学びの、その先
先日、本校理学療法科において、6月から始まる臨床実習を前にした「バイタルサイン測定」の演習が行われ、私も協力する機会をいただきました。
血圧、脈拍、呼吸などを確認するバイタルサインの測定は、医療現場における基本的かつ重要な技術の一つです。今回の演習では、普段あまり接する機会のない教職員を対象に、生徒が実際の臨床場面を想定しながら測定を行うものでした。
私の担当となった理学療法科 津田 歩さんは、緊張した様子を見せながらも、相手への声かけや説明を丁寧に行い、一つ一つ確認しながら誠実に対応していました。その姿からは、単に技術を習得するだけではなく、「人と向き合う専門職」として成長しようとする意識が感じられ、大変頼もしく思いました。
毎年行われている演習ではありますが、今年は、生徒の様子を見ながら、いつも以上に本校理学療法科の歩みについて思いを巡らせる機会となりました。
その歩みを紐解くと、本校に理学療法科が設置されたのは昭和39年。当時、日本では近代医学の進歩とともに、リハビリテーション医学が「社会復帰の医学」「第三の医学」として重視され始め、理学療法士養成の必要性が急速に高まっていました。国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院が、日本で最初期の理学療法士養成機関として発足し、2年目を迎えようとしていた時代でもあります。そうした中、当時の文部省では、視覚障害者のためのリハビリテーション教育を公立盲学校に設置する構想を進めており、本校の理学療法科も、その国の構想と期待を背景として誕生しました。現在、全国で理学療法科を設置している特別支援学校(視覚障害)は、本校と大阪府立大阪南視覚支援学校の二校のみとなっています。
今でこそ、「障害者雇用」や「合理的配慮」という言葉は広く社会に浸透しています。しかし本校は、それらの言葉が一般化する以前から、視覚障害のある人が専門性を身につけ、社会の中で働き、貢献していくことを実践してきた教育機関でもあります。視覚障害者の就労支援を先導するとともに、社会参加の実現や障害理解の深化の一助を担ってきたと言えます。
日々の学びの風景の中にも、本校が長年積み重ねてきた教育の意味や役割を改めて感じます。
本校はこれからも、理学療法科をはじめとする教育を通して、生徒一人一人が社会とつながり、誰かを支え、社会に貢献できる人材として成長できるよう、教育活動の充実に努めてまいります。
令和8年6月11日 筑波大学附属視覚特別支援学校 校長 森田 浩司
校長室から バックナンバー
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2025年度
2025年 4月4日「着任の挨拶・学校教育の方向性について・学校としての決意」2025年 4月18日「新しい生活のスタートで学んだ “生きる力” 〜地域とともに、生徒たちとともに〜」
2025年 5月7日「地域に支えられて~放課後等デイサービス事業所との連携~」
2025年 5月23日「理学療法科の授業に協力して:社会に生きる力を育む実践の場」
2025年 6月2日「地元・大阪で輝いたその一蹴——ブラインドサッカー国際大会 優勝の報告」
2025年 6月23日「沖縄慰霊の日に寄せて ~平和を考える給食時間~」
2025年 7月7日「理学療法士国家試験における合理的配慮について ~視覚障害のある受験生のために~」
2025年 7月25日「足元の自然に耳をすませて~飯盛山登山に代わる自然観察から~」
2025年 8月5日「自立へつながるキャンパス体験~「支援を受ける側」から「支援を活かす側」へ~」
2025年 8月21日「視覚障害教育への熱きまなざし ~ それぞれの夏季研修の始まり ~」
2025年 9月2日「「準備は裏切らない!」——全国大会 優勝、そして次の挑戦へ!」
2025年 9月25日「音楽に込めた想い ―音楽科3年生の挑戦」
2025年 10月7日「未来の教師たちとともに ~自立活動の重みを伝えて~」
2025年 10月29日「あふれる二人羽織 ~視覚障害教育の基本~」
2025年 11月4日「からだを診る、こころにふれる ―ALSの方々との出会いから学ぶ―」
2025年 11月27日「「ちいさな力、大きながんばり!」みんなのうんどうかい」
2025年 12月9日「31人の世界が並んだ日 ~ 一日だけの作品展 ~」
2025年 12月22日「未来の理療師~養成施設との連携が拓く理療教育~」
2026年 1月7日「新年にあたってのご挨拶 ―150周年の節目の年―」
2026年 1月30日「挑戦の先に広がる学び ― トビタテ!留学JAPANを通して―」
2026年 2月12日「学校を支える温かなまなざし- 触感に込められた思いやり」
2026年 2月27日「視覚障害教育の現在地― 全国からの120名とともに考えた、授業と協議のかたち ―」
2026年 3月17日「音で感じる、料理の時間―寄宿舎「サウンドフルクッキング」の取組―」
2026年 3月25日「新たな門出 ― 魂のこもった卒業演奏とともに ―」
2026年 4月 1日「学校教育の方向性、創立150周年を迎えて、学校としての決意」
2026年 4月20日「創立150周年の年のはじまりに ― 歴史の中にいる私たち ―」
2026年 5月13日「研修から見えてきた盲学校の現状 ―関東地区盲学校ルール研を開催してー」
2026年 5月25日「本校の創立期を振り返る ― はじまり ―」

