筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

 このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。


3月の校長室から


 「3月の校長室から」をお読みくださり、ありがとうございます。
 早いもので今年度も最終月となりました。3月と言えば卒業式ですね。全国どの学校の校長先生も、走馬灯のように卒業生のことを思いうかべながら、校長として最後に伝えたいことを数分間の校長式辞にどう託すか悩んでいると思います。本校の第46回卒業証書授与式は15日(金)に挙行されます。幼稚部4名、小学部3名、中学部12名、高等部普通科13名、高等部音楽科3名、専攻科鍼灸手技療法科7名、専攻科理学療法科3名、専攻科音楽科1名、合計46名が卒業・修了いたします。ご卒業おめでとうございます。
 さて、専攻科音楽科の1名ですが実は最後の卒業生なのです。本年度末をもって専攻科音楽科は、長い歴史に幕を閉じることになります。理由は定員未充足の状態が継続しているためで、すでに募集停止をしていました。御承知のように視覚障害者と職業としての音楽は、琵琶の演奏で「平家物語」を語る琵琶法師(小泉八雲の「怪談」にも所収されている「耳なし芳一」は有名ですね)に代表されるように、その歴史は古いものがあります。また、三味線で弾き唄を歌いながら村々を巡った、視覚障害のある女性の旅芸人「瞽女(ごぜ)」も有名です。本校における音楽教育は、「視覚障害教育百年のあゆみ(創立100周年記念誌)」によれば、明治19年に筝曲の指導が始まり、明治43年に音楽科という科名が誕生したことが分かります。そして現行の専攻科音楽科が設置されたのは、昭和26年前後のようです(確かな記録を調査中)。音楽科教員養成課程を設置していた時期もありました。これまで100名を超える卒業生が専攻科音楽科を巣立ち、邦楽・洋楽・声楽の別を問わず音楽を生業として今も活躍し、私たちに音楽の素晴らしさを届けてくださっています。このように、視覚障害のある方々が職業自立のために音楽を深く学び、音楽を通じて自己実現を図り、よりよい社会生活を送れるようにする手段としての音楽教育の意義は大きく深かったのです。それは、鍼灸手技療法や理学療法といった職業教育課程に引けを取るものではありませんでした。この度、専攻科は職業教育の場としての舞台を降りますが、視覚障害教育における音楽教育は高等部本科音楽科が担い、さらなる充実と発展を図ってまいります。
 ここまで読んでくださった皆様、とくに視覚障害のある中学生の担当の皆様、本校高等部には普通科だけではなく音楽科も設置してございます。選択肢の一つとしてご検討くださいますようお願い申し上げます。

本校の46名の卒業生・修了生のみなさんに幸あれ!


令和6年3月1日
筑波大学附属視覚特別支援学校
校長 青木 隆一

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2024/3/1