筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

Q16 担任が配慮できることは何ですか?

 弱視児童生徒が通常の学級で過ごす際に、担任の先生は様々な配慮・工夫が必要となってきます。今回は、授業時での担任の先生に配慮いただきたいことをお伝えします。

○担任の先生に配慮いただいきたいことの例
・指示を明確にしてください
 ここ、そこ、あそこ、それなど、位置関係が曖昧で所謂、視覚を使って何となく見てわかるものについては、弱視児童生徒にはわかりませんので、どこに何があるのかなど、明確に指示してください。
・黒板に板書する際には、読みやすい大きさで板書してください。弱視児童生徒の見え方によって異なりますが、100ptから200pt程度の大きさの文字サイズが望ましいです。
・板書のチョークの色は、弱視児童生徒にとって読みにくい色の使用は控えてください。例えば、黒の黒板に緑や青などの色チョークを使うと見えにくいことがあります。
・折れ線グラフなどの資料で、赤やオレンジといった同系色を使って違いを示すなどしても、色の違いを理解しづらいことがあります。
・弱視児童生徒に配布するプリントについては、弱視児童生徒の見え方に合わせた資料を他の児童生徒とは別にご準備いただけると良いです。その際に、ゴシックや明朝体などのフォント、文字サイズ、行間の詰まり具合などが、弱視児童生徒にとってわかりやすいものであることが望ましいです。
 Windows 10以降のPCにはUDフォントが入っています。弱視児童生徒にとって、見やすいフォントになりますので、お勧めします。

 担任の先生が弱視児童生徒の学習・生活環境を整えてあげることが、見えにくさに対する配慮の第一歩です。その上で、周囲の子どもたちにも、見えにくさに対する配慮について、ご指導いただけると、子どもたちにとっても明確に理解していくことにつながります。

以下は、弱視児童生徒それぞれの代表的な特性と配慮事項です。
・視経験が不足していることがある。
・境界や立体感を含めた事物の細部の把握が困難である。
・目と手の協応動作や、手指の動きを育てる必要がある。
・類似する文字の判別や漢字の読み書きが不正確になることがある。
・道具を使用した作業に時間を要することがある。
・視機能の低下(障害の進行)を把握し、医療機関との連携が必要がある。
・心理的に不安定になる面がみられる。

 弱視児童生徒の見えにくさを改善するための配慮として教室における座席位置や光量調整などの教室環境の整備を進めます(参考:Q14 教室の環境を整える上で、配慮すべきことはありますか?)。
 教材作成時に、文字の大きさや文字間隔、行間隔、字体、用紙の質や色、文字や図等のコントラストなどを視力の状態に合わせて調整します。ルーペや単眼鏡、拡大読書器、タブレット端末などの視覚補助具の活用、マスが大きく罫線が太い弱視児用のノートを導入するなどの配慮も必要です。
 弱視児の文字指導においては、見やすい文字の提示と丁寧な指導が必要です。文字サイズが大きければよいものでもなく、視野の狭い児童などは大きすぎると見えにくいという場合もあります。白黒反転の文字の方が読みやすい児童もいます。

UDフォント

 見やすい文字サイズで提示することで、間違いもなく、読みも書きもスムーズにいきます。児童にとってどのサイズの文字が一番見えやすく、読みのスピードも出るのか確認し、教材を作成するとよいです。画数の多い漢字などは、通常提示する文字サイズよりも少し大きめのサイズで提示する方が、見やすくなり間違えて覚えることも少なくなることもあります。
 書きの指導では、薄い文字をなぞるなどのワークブックがありますが、弱視児にとっては見えにくいので濃い線にするなどの工夫が必要です。
 板書をノートに書き写す活動は、見えにくさを補うために板書内容を読み上げるなどの配慮が必要です。
 視覚障害に対する周囲の理解を得るため、障害理解教育の一環として、「見えない」「見えにくい」とはどのような状態なのか、またどのようにサポートしていったらよいかについて、クラスの児童だけでなく学校全体の児童生徒、教職員、保護者にも伝えることが重要です。視覚特別支援学校の教員や視覚障害関連施設・団体の職員が障害理解教育の出前授業を行っています。また視覚障害当事者が自身の経験に基づいて講演するなど、啓蒙・啓発活動を行っていますので問い合わせてみてください。
 対象の児童生徒に進行性の眼疾患がある場合は、視力低下に対する心理的不安を軽減させ、障害の受容を促すような関わり方にも配慮します。視覚障害および視機能全般の知識を深めながら、視覚に障害のある子どもたちの支援を考えていくことが大切です。

【参考文献】
・「通常の学級に在籍している視覚に障害のある子どもたちのためのサポーターブック」
 筑波大学附属視覚特別支援学校小学部教育支援部、2022
・「見えにくい子どもへのサポートQ&A」氏間和仁、読書工房、2013

目次ページへ