筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

Q10 拡大読書器は、ルーペと比較して、どのような良さがありますか?

 視覚補助具の一つである拡大読書器がルーペと決定的に異なる点は、背景と文字を白黒反転させることができるという点が挙げられます。見え方に羞明(まぶしさ)がある場合、紙の白さもまぶしく感じることもあります。その場合、黒地に白色の文字が書いてある(白黒反転)方が、かなりまぶしさが軽減され、見やすくなります。学校で白黒反転の資料を作成することはできますが、印刷が大変であったり、書き込みができなかったりすることにより、実際に白黒反転の資料が提供されることはあまりありません。拡大読書器は簡単に白黒反転した文字を画面に映し出すことができ、白黒反転の方が見やすい人には大きなメリットがあります。また、資料に自分で書き込むこともできます。画面の大きさにもよりますが、高倍率に拡大できる点もルーペと異なる点です。ルーペは高倍率でも15倍程度ですが、拡大読書器は画面いっぱいまで拡大することがきるため、50倍以上に拡大できる機種もあります。ルーペは倍率が高くなるほど、レンズの径は小さく、厚く、暗くなります。拡大読書器は倍率によって見やすさが変わることはなく、映し出す文字の大きさにかかわらず、見やすい大きさに拡大することができます。

 拡大読書器は持ち運びを想定しない卓上型(据え置き型)と、自由に持ち運びができる携帯型の2種類に大別されます。卓上型の場合、テレビのような画面とその下に固定されたカメラとテーブルがあり、見たいものをテーブルの上に置くと画面に拡大されたものが映し出されます。倍率や白黒反転、コントラストなどを自由に変えることができます。拡大されたものはテレビのような画面に映し出されるため、画面を見る際には背中を丸める必要はなく、背筋を伸ばした姿勢のまま画面を見ることができ、体への負担も少なく済みます。カメラとテーブルの間は広い空間があり、書物だけでなく様々なものが見やすいほか、書く作業もやりやすく、授業でノートを取ったり、長文を書いたりすることもできます。また、カメラで手元を映し、画面を見ながら細かい手作業を行うことも可能です。卓上型の拡大読書器は、画面が大きい分、特に文字を読む場合には画面の文字が揺れ、いわゆる船酔い状態が起こりやすくなります。画面の中で見る部分以外を隠すマスキング機能やラインの表示などの機能をうまく使うことで、効率よく使えるように練習して慣れていく必要があります。

 携帯型拡大読書器は、どこでも自由に持ち運ぶことができるのが最大のメリットです。様々な形、大きさ、価格のものがあるので、それらを考慮して、機種を決める必要があります。どこにでも持ち運べる、卓上型と比べると安いものがある、という点のみで選ぶと操作がしにくい、見づらい、書きにくいなどの問題が起こり、結局は使わなくなるということが起こりえます。また、充電式なので毎日充電する必要があり、充電し忘れてしまうと、使用することができません。フル充電しても、一日中使用すると充電はもたないため、途中で充電できるようコンセントを確保し、アダプタを携帯するなどの準備をしておくことが必要です。拡大読書器を選ぶ際には、どこで何に使いたいかをよく検討して選ぶことが大切です。

据え置き型拡大読書器 携帯型拡大読書器


 拡大読書器を用いて、横書きの本を読書している場面の動画

 

(1)視線はある程度固定して、その視線の先に文字を流し込むイメージで台を動かす。
(2)初期の段階では、行末まで読んだら同じ行の行頭まで戻り、1行下げる。紙や本を置く台(XYテーブル)を確実に動かせるようになってきたら、効率を高めるために行頭に戻す途中で1行下げる方法を試すとよいです。

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