筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

Q3 見え方を知るための検査には、どのような方法がありますか?

 視力には、遠くを見る遠見視力と近くを見る近見視力があります。例えば、教室で遠くの黒板の文字を見るのに必要なのは遠見視力、ノートや教科書など、目からおよそ30cm内の距離を見るのに必要なのが近見視力です。
 遠見視力は、いわゆる学校で行う視力検査で計る視力です。5m先の視標を片眼ずつ読み取り、視力値を出します。検査にはランドルト環を視標に用い、ランドルト環の切れ目がどの方向かを答えてもらって進めます。一般的にはランドルト環の大きさが上から下へ小さくなって並んでいる字づまり視力表を用いますが、低学年の児童など読み分けが困難な場合には、単独(字ひとつ)視力表を用いて測定することもあります。視標は0.1までしかないため、これが読めない場合は、読める距離まで前進させ、視標との距離と次の式から視力値を求めます。
 視力値=0.1×0.1の視標が見えた距離(m)/5(m)

字ひとつ視標字ひとつ視標(読める距離まで前進)

 近見視力を測るには、遠距離視力検査と同様に、近距離単独視標を用いて近距離視力検査を実施します。
 この検査では、写真にあるような視標を30cmの距離から測定していきます。遠距離視力検査と同様に、片眼ずつ計測し、視標内のランドルト環の向きを指さしてもらう、もしくは左右上下を言ってもらい確認していきます。
遠見視力と近見視力は理論的には同じはずですが、屈折異常がある場合には一致しないこともよくあります。近くのものが見えにくい場合には、近距離視力検査も眼科で合わせて行うことをお勧めします。眼鏡の装用することにより、近くのものが正しく見えているかなど学校での学習環境を整えていくことが大切です。
 最大視認力は、視距離に関わらず、近見視力視標で識別できる最小の視標とそのときの視距離を示したもので、「最小可読視標」ともいいます。つまり、最大視認力は弱視児童生徒が、どれだけ物を近づけて、どのくらい小さい視標が見えるかを測ることです。またその距離も測定したり、左眼で見た時の右眼で見た時の違いがあるかも確認します。
 この視力値により、プリントの文字や図表などへの配慮について検討したり、弱視レンズの選定にも参考にしたりします。どれぐらい見えるのかを測ることができ、弱視児童生徒の読書文字サイズを決める手がかりになります。

近距離単独視標
(株式会社半田屋商店)
新標準近距離視力表
(株式会社半田屋商店)
最大視認力を計測する様子

 ランドルト環による検査が難しい場合には、目の動きによって他覚的に評価する視力検査や、イラストなどを用いて行う検査もあり、幼児や知的障害を有する児童生徒に用いられます。

●他覚的視力検査
【縞視力 Teller Acuity Cards(テラー・アキュイティ・カード、TAC)
     Square Wave Grating Stimuli】
 縞模様が見えると目が追ってしまう反射を利用した測定器具です。乳幼児の視力検査やランドルト環の方向を答えることが困難な場合などに使います。幅の広い縞模様から徐々に幅の狭いもの提示した時の子ども目の動きを観察します。

Square Wave Grating Stimuli Teller Acuity Cards (TAC)

●自覚的視力検査
【森実(もりざね)ドットカード】測定距離30㎝
 ウサギやクマのカードの目(ドット) の大きさや位置が異なり、それを見つけて指さしてもらいます。

【単独絵視標】測定距離 5m
 指標に黒の絵(チョウ・とり・さかな・イヌ)が描いてあり、その名前を言ってもらうことで検査します。絵の名称が言えない場合は同じ絵を近くに置き、指さして答えてもらいます。ランドルト環よりよい視力が出ることが多いので参考値として判断します。

【Playing Cards】測定距離40㎝
 字ひとつ視力検査のほかに、8枚の同じ文字の大きさのカードの中に1枚だけ違うカードを混ぜて見つけられるかどうかゲーム感覚で検査することができます。

森実ドットカード
(株式会社半田屋商店)
単独絵視標
(株式会社半田屋商店)
Playing cards
(株式会社テイエムアイ)

 見える範囲を検査する視野検査は、医療機関で行います。視野についてはQ6を参照ください。

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