筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

Q2 主な眼疾患と見え方について教えてください。

 眼の構造と機能、そして眼疾患の基本知識を得ることは、多様な見え方を理解し、気づきを得る上で役立ちます。

〇主な眼疾患・症状
眼疾患・症状見え方
角膜混濁 本来透明である角膜は光の屈折を調節していますが、その部分が濁ることで、光の反射に影響を与え、まぶしさを感じたり、あるいは、濁りの程度によって、全体が暗くぼんやした見え方になったりします。先天性、遺伝性、あるいは他の疾患による合併症などによって起こります。
ぶどう膜炎 ぶどう膜は、虹彩、毛様体、脈絡膜からなる非常に血管の多い組織です。ぶどう膜炎は、サルコイドーシス・ベーチェット病・原田病などの免疫異常や細菌・ウイルスへの感染、腫瘍、外傷など多様な原因により発症します。
 炎症した細胞や血管が眼球内に入ると濁りが生じ、視界が霞んだり、まぶしさを感じたりします。特に、虹彩を含む前眼部での炎症は、視界の歪みや目の痛みなどを引き起こします。また、硝子体や脈絡膜、網膜まで炎症が広がる中間部・後部の炎症は、浮遊物が浮かんで見える飛蚊症として自覚する場合があります。
緑内障 眼圧が上昇することで、目と脳をつなぐ視神経に障害が生じ、徐々に見える範囲が狭くなります。現在、中途で視覚障害となる疾患の第1位となっています。初期には、自覚症状がないことがほとんどですが、視野が狭くなったり、暗点が生じたり、また、急性の場合には、眼痛、充血、目のかすみや頭痛が起こることがあります。
 緑内障は、目の構造や原因によって、様々な種類がありますが、眼圧は正常範囲なのに、他の原因により視神経へダメージを与えるものがあります。また、発達緑内障は、生まれた直後から眼圧が高く、眼球そのものが大きくなり、その結果、視機能が損なわれます。
網膜色素変性症 遺伝性で進行を伴い、網膜の中で光を感じる視細胞のうち、主に暗いところでの見え方や視野の広さに関係する杆体細胞がダメージを受け始めます。その結果、夜盲が生じたり、物にぶつかりやすくなるなど、輪状暗点、そして視野狭窄になったりしますが、進行の速度には個人差があります。難病指定されています。
糖尿病網膜症 糖尿病の合併症として、眼内に新生血管が生じて増殖し、眼底出血、硝子体出血、網膜剥離や緑内障などを引き起こす場合があります。初期症状では、出血、白斑などが生じても、ものを見る中心の黄斑部に病変が及ばなければ自覚症状はありません。黄斑部にむくみが生じるなどすると、かすみがひどくなったり、ゆがんで見えたりします。さらに症状が悪化し、新生血管が硝子体まで延びると、飛蚊症が現れたり、網膜剥離を引き起こしたりします。
白内障 水晶体に濁りが生じ、光が散乱してまぶしく見えます。また、かすんで見える、近視が進んだように感じることも初期症状として表れます。加齢による原因が最も多いといえますが、外傷やアトピーによるもの、糖尿病やぶどう膜炎によるもの、先天性のものがあります。手術では、屈折の役割を担う水晶体の代わりに、眼内レンズを入れることが主流ですが、メガネやコンタクトレンズを使用する場合もあります。
視神経萎縮 原因には視神経や網膜の病気、抗結核薬などの中毒性視神経症、事故による外傷性視神経症、遺伝性視神経症などがあります。遺伝性であるレーベル病は、男性に多く、黄斑部での視力低下が生じ、両眼で0.1以下になることが多いです。
病的近視 眼軸が長く、眼球の後方部分が変形して網膜・脈絡膜や視神経に病的変化を生じ、眼鏡などで矯正しても正常な視力が出ない状態となるものを指します。近視の多くは学童期に眼軸長が過度に伸びる軸性近視で、眼鏡によって正常視力まで矯正可能な場合が多いですが、まれに、病的近視に進行する例があります。(病的近視の目安は、5歳以下では-4.00Dを超える、6~8歳では-6.00Dを超える、9歳以上では-8.00Dを超える近視とされています。)
 強度近視では、焦点が網膜で合わず、ものがぼやけて見え、さらに緑内障、黄斑変性症、網膜剥離などを起こして視力が極端に低下する場合があります。
先天性無虹彩 先天的な素因によって虹彩が根元を残して欠損するため、光の量を調節することが難しく、まぶしさを引き起こします。また、眼振が生じたり、他の合併症を起こしやすく、黄斑低形成、白内障、緑内障、斜視、角膜混濁をきたすことがあり、難病指定されています。遮光メガネ、または虹彩付きコンタクトレンズで眩しさを軽減します。

【参考】
  日本小児眼科学会ホームページ  http://www.japo-web.jp/
   「現代の眼科学」 改訂第10版 監修 所 敬 金原出版 2009年
「目のしくみ事典」 監修 若倉雅登 技術評論社 2017年

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