筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

拡大教科書作成のための配慮事項 算数・数学

 この留意事項は、算数・数学の拡大教科書の作成を終えて、確認された事項をまとめたものです。
 また、目的によって、拡大をした方がよいケースと、拡大の必要のないケース、それから、拡大すると問題になるケースとがありますので、内容をよく理解して、目的を明確にした上で、編集を行う必要があります。


 全  般

 アルファベットのフォントは、数式や頂点を表すものなどで異なりますので、フォントの使い分けには注意が必要です。
 立体や平面図形の網掛け(グラデーション)は省略して、辺などをはっきりとさせます。また、文字が乗る所の地アミやアミ文字などは見づらいので極力使用しないでください。墨字か白抜きで書いてください。


 数  式

 本文中の式、0、ルビの前後は適度に少しあけてください。
 式変形において、1行の中に=は一つだけになるように心がけてください。行頭に一つだけがポイントです。
 分数を含む式では、行間を広めにしてください。
 数字の1は、ただの縦棒でなく、頭から左に短い横棒のある字体を用いてください。
 指数、対数の底、積分区間、順列組合せなどの小さい数字は、普通にかかれている場合とバランスが多少ずれても、大きめにするようにしてください。



 図形・グラフ・絵・写真等

 図形のすぐ近くに本文を書かないようにしてください。
 図形を説明する本文は、同じページに配置します。出来れば、位置関係が1冊の教科書の中で統一されるとなお良くなります。
 合同な図形で、対応する角度などが等しいことを色で示してある場合は、記号で合同を示すようにかえるとより正確になります。
 水の深さや、物の高さが変化していく様子を複数の図を連続して示す場合など、比較する図やグラフは見開きで、同じ高さ(同じ位置)に、見開きが無理な場合も、比較するものは次のページで同じ位置になるようにしてください。
 地図上の距離を教科書上の長さを測って、縮尺率を用いて計算するようなところでは、その図の拡大率に注意する必要があります。
 グラフなどの縦軸の数字で区切りの部分に横線で,めもりがふってあると使いやすくなります。とくに横幅の広いグラフや表では左右の縦軸に目盛りを入れるような工夫が必要です。
 拡大教材とはいえ、全ての図柄を拡大するのではなく、問題によっては原本のサイズと同サイズでないと問題が成り立たない場合もあるので注意が必要です。
 原本ですでに大きく使われている写真、図などは同サイズでも問題はありません。
 立体表現の影のグラデーションは見づらいので、なるべく使用しない方が良いです。
 図と文,図中のものの形などには,わかりやすいように境界・輪郭が必要です。
 問題の番号など、設問との距離を一定の間隔でとると、探しやすく、使いやすくなります。
 絵を見て設問に答えるようなものについては、設問に関わる重要な部分を強調するために、絵の単純化が必要となります。
 表、グラフ、写真などはコントラストが低かったり線が細く、原本のままでは見にくいため、輪郭を加えるか、書き起こしてあった方がよいです。
 交点や垂直マークなど、関係を表す記号などは、とくに、はっきりとするように拡大する必要があります。
 半径などが斜めで表記されている図や文字は見にくいので横表記にしてください。
 連続した面など、図の重なりが多いものは間を少しとって線や円を減らしたほうが見やすくなります。奥の面に行く線と下の面に行く線が多すぎて分かりにくいような図でも、奥に対する図と下に対する図を分けるなどで対応できるケースがあります。



 その他

 拡大したことで設問ごとの間隔がつまりすぎることなく、ゆとりがあるほうが見やすいです。
 設問と図の関係は、文章が先にきて図があとのほうがわかりやすいです。
 ページをまたがる設問については、なるべく同じページに入れたほうがよいです。
 矢印や、{の形は、凹凸部分がはっきり飛び出しているほうが見やすいので、意識してください。矢印は先が開いている方が見やすいです。
 数直線ではめもりをはっきりとさせ、統一してください。矢印が数直線を指している場合は線と矢印の先をつけるようにしてください。
 角度の゜の位置は数字との間に適度なスペースを入れるようにしてください。周りより級数を若干゜だけ大きくしてください。
 cmなどの単位の間のあけ方は、あけすぎず、つまりすぎずを心がけてください。
 筆算のときの四角のマスや書き込む問題の表はそれを想定して少し大きくしてください。
 本の縦置きは使いにくいのでやはりなるべく横置きで入る配置がよいです。リングファイルなど、開いた状態で置きやすい作りのものも便利です。
 すべてのページをカラーにしない場合、カラーページにする部分(優先順)は、
  ●複数の面が交差しているような図
  ●折り紙の図のあるところなど、線だけでは表現が難しいところ
  ●色部分が登場する設問があるところ
  ●写真を白黒にするとわかりにくいもの
を意識してください。
 数学の場合、文章の右端の見た目がそろっていなくてもよいので、なるべく文節ごとに読みやすい区切りで改行してあったほうが読みやすくなります。
 フルカラーでない場合、線の太さの違い、線種や枠の区別、仮定と結論で図を二つに分けるなどで重要な部分がわかりやすい表記になるように白黒のコントラスト表記で対応するとよいです。また、色で区別する場合も原本のような曖昧な色ではなく、赤、青、緑など原色ではっきりした色がよいです。同じスタイルの表記・色分けは違う学年でも統一するとよいでしょう。
 上下巻で分ける点で、以下のことに留意してください。
  ●もくじは基本的にその巻に掲載している箇所を最初にし、他の巻の章見出しを順番に簡単にかつ明確に掲載
  ●「いろいろな問題」補充問題はそれぞれ対応する巻の後ろに掲載
  ●自由研究は下巻に掲載
  ●さくいんは上下巻共通のものを掲載

2008/05/26