筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

「拡大教科書の作成方法」 音楽

 五線譜の特質を考えると,一つひとつの音符や記号に対する理解を深めるために,単にある部分を拡大するだけではなく,音楽の流れを感覚的に把握しやすいサイズということも考えなければならないでしょう。なぜなら,実際に耳に入ってくる音の流れ(だんだん高くなっていく等)と,楽譜を見た時の視覚的な感覚が一致しないと,五線譜の意味合いが理解できないまま,楽譜への苦手意識が高まってしまうからです。楽譜は,楽曲の編成によって,その情報量にかなりの差があります。また,その楽譜の内容によって授業内での使われ方が異なり,見やすさの基準もおのずと違ってきますので,現段階ではひとつの型としてこのサイズが最適であるとは示すことができませんが,それぞれの楽曲で見やすいレイアウトを工夫していかなければならず,以下のような工夫が考えられるでしょう。

五線譜に関わる項目の中で,それぞれのサイズを検討した方が良いと考えられる項目

  • 五線の幅,線の太さ,段組
  • 小節線の太さ
  • 音符の大きさ
  • 符桁の太さ
  • 加線の太さ
  • 歌詞と楽譜部分との間隔
  • 記号類の配置

【教科書の版】

 ・可能であるならば,1段に入る小節数を多くするために横長の版にするか縦置きにする。

【ページ数と分冊】

 ・歌う時に立って楽譜を持つことを考えると,分冊数が多くなっても,1冊あたりの重さがあまり重くない方が良い。または,ピースのように,その部分が抜き取れる形にする。

【図版】

 ・楽譜の一部分を示す場合には,囲む線を太くしたり,色を濃くしたりする。 ・色の濃度や線などの,コントラストをはっきりさせる。

【写真】

 ・写真が背景で歌詞が載っている場合には,写真と歌詞を別々に載せる。 ・できれば,1ページにたくさんの写真を載せるのではなく,1枚の写真に絞る。

【ページレイアウト】

 ・タイトルや,作詞・作曲者名なども含めた楽譜の部分と,その他の説明の部分とがはっきり区別がつきやすい形にする。 ・歌唱教材の場合,歌のパートと伴奏譜の間のスペースを広げる。また,楽譜の中に組みこむ歌詞は1番のみにして,2番以降は別に載せる。 ・歌唱教材の場合,可能であれば伴奏譜を省略して載せる,または,巻末に別に伴奏だけ載せる。 ・アンサンブルの場合,‘合わせる’ということを考え,縦の線がわかりやすいようなレイアウトにする。 ・アンサンブルの場合,2段あるいは3段譜以上になっても同じパートが目で追いやすくするために,レイアウトを工夫したり,各パートごとにまとめた楽譜も別に載せる。

【文字間・行間】

 ・歌の曲で,原語歌詞の読み方(発音)が,ふり仮名のように併記されていると読みにくいため,字体やサイズ,あるいは,楽譜との距離などを工夫する。

【字体】

 ・楽譜の中に書かれている楽語は,単語としてというよりも記号として考え,できるだけオリジナルの字体をそのまま用いる。 ・歌詞が日本語ではない場合,楽語との混乱を避けるため,字体を変える。 ・コードネーム表記の文字が,他の情報と混じらないようにする。

2009/01/10