技術科教育
1.教育内容の変遷
中学部の授業では、A組(全盲)とB組(弱視)を各2グループ(1グループ3名)に分け、家庭科と技術を隔週で行っている。本校は準じる教育課程であるため、基本的には通常の中学校と同じ内容の学習を行っている。
1年生では、「材料と加工に関する技術」、2年生では「エネルギー変換に関する技術」、3年生では、「生物育成に関する技術」「情報に関する技術」の学習を行っている。
A.「材料と加工に関する技術」の指導内容例
- 木材・プラスチック・金属の各材料について、実験を行いながら特徴をつかむ。
- 設計図や模型等に基づいて、製作するものを正確にイメージする力をつける。
- ベルトサンダー、ボール盤などの工作機械を安全に使用する方法を習得する。
- 工具を正しく使用し、正確な加工ができるようになる。
- 製作実習(本棚、引き出し付きの棚など)
- 各機器のエネルギー変換について
- 発電所の仕組み、送電の仕組み
- 製作実習(ラジオ、テーブルタップ)
- 栽培、飼育、林業、水産生物の栽培の方法や流れや用語について
- 栽培の作業について。(播種、管理作業、収穫、病害虫の防止)
- 生物育成と環境との関わり
- パソコンの基本操作(ローマ字入力、ワード等での文章入力)
- 情報モラル・マナーについて
- インターネットの仕組みについて
- 各製品内での計測制御について
2.教材教具の工夫
教材教具の工夫については、関東地区視覚障害教育研究会では、次のような項目について、様々な工夫が発表されてきた。それぞれの具体的工夫の内容をここに記すことはできないが、これらの工夫が実生活でのヒントとなり、家庭生活に応用されるようになれば幸いである。
- 木材加工 線引きやのこぎり引き、釘打ち、組立のための補助具等。
- 電気 ビニール被覆線の加工、ビス・ナットの締め方、ハンダ付けの方法、故障診断への道具、方法。
- 機械 分解・組立用の工具、ボルト、ナットの締め方、工具類、タップ・ダイスの利用、仕組み理解のための模型づくり、振動や音の診断方法。
- 栽培 種苗植え付けの補助具。穴あけマルチ。
- 情報処理 キーボード、マウス以外の補助的なものの工夫、市販製品の利用。
3.技術教育における指導上の留意事項
- 基本的には全盲生徒と弱視生徒は分けて指導した方がよい。領域の内容によっては盲弱混合のグループでもよいが、視力のあるものが先行しがちで、好ましくない状況が生ずる。たとえば、コンピュータの場合、弱視生徒には可能なものもあるが、全盲生徒の図形処理やプログラミング等は今後の課題となっている。
- 基本的な実技実習の繰り返しをする。
- 生徒の作業能力を考え、製作しやすいものを選ぶ。
- 生徒の能力と作業時間差への配慮。
- 危険を伴う作業、機器、工具の取り扱いの指導、安全な作業への心構え。
- 日常生活への応用、実用化へ向けての指導。
- 作業台上の道具と教材の置き方。
- 時間にゆとりを持つことによってより安全性を確保する。
- 各領域毎に、使用する教室と工具棚等の配置に配慮し、生徒自身が整理整頓しやすく、管理しやすいようにする。
4.弱視生徒への配慮
- 眼疾患種類による視覚の差はなかなか理解しにくい。日常の観察、本人への問いかけ等により判断し、その都度、配慮工夫するようにしている。
- 安全な作業への配慮
- 目を近づけての作業は危険を伴うので、工作物や工具、機器への体の位置や力の使い方等も工夫する。たとえば釘打ちするときは目を近づけなくても、手首や、肘を支点にして打つなどして、繰り返し指導する。
- 盲弱混合授業の場合、全盲生徒に気をとられ、弱視生徒の状態を見逃しがちである。作業の際の生徒の配置なども考慮に入れる必要がある。
5.今後の課題
技術教育は、明治当初の裁縫、手工に始まって、現在の材料と加工、エネルギー変換、生物育成、情報などの分野に引き継がれているが、基本的には日常生活への応用や実用化を学習するものである。従って、実習が欠かせない教科であって、実習に必要な時間をどう確保するかが大きな問題となる。
盲学校では、手を使用する学習に重点を置き、指導を行ってきたが情報化社会となり、生徒の多くがLINEやインターネットを普段使用している状態になってきている。そのため、情報分野の配置を工夫する必要がある。