このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
校長室から
変化の中で進化してきた教育 ― 技術革新とともに歩む ー
連日の厳しい暑さの中ではありますが、2学期の始まりに向けて、学校ではさまざまな準備を進めています。幼児児童生徒が元気な姿で登校してくれることを、教職員一同楽しみにしています。
創立150周年を迎えた本年度、「校長室より」では、本校の歴史を振り返っています。これまで、創立当時の人々の願い、そして長い年月をかけて培われてきた視覚障害教育の専門性について紹介してきました。
今回は、「教育を支える技術の進歩」に目を向けてみたいと思います。
150年前の教育環境を想像すると、現在との違いに驚かされます。教材は手作りのものが多く、情報を得る手段も限られていました。それでも先人たちは、「どうすれば理解できるか」「どうすれば学べるか」を問い続け、一つ一つ工夫を積み重ねてきました。その姿勢は、現在にも脈々と受け継がれています。
近年、情報通信技術(ICT)の進歩は目覚ましく、視覚障害教育を取り巻く環境も大きく変わりました。点字ディスプレイや音声読み上げソフト、電子データによる教材、タブレット端末や生成AIなど、新しい技術が次々と教育の現場に取り入れられています。
しかし、本校が大切にしているのは、「新しい機器を使うこと」そのものではありません。大切なのは、その子供にとって最も学びやすい方法を考えることです。
ある子供には点字が最も力を発揮する学習手段であり、ある子供には音声が適しています。また、拡大文字やデジタル教材を活用することで理解が深まる場合もあります。
つまり、本校の教育は、「点字かICTか」という選択ではなく、それぞれの強みを生かしながら組み合わせ、一人一人にとって最適な学びを実現することを目指しています。
私は、テクノロジーは教育を変える目的ではなく、教育をより豊かにするための手段であると考えています。
だからこそ、新しい技術が生まれても、本校が150年にわたり受け継いできた「幼児児童生徒を中心に考える教育」は変わることはありません。技術は進歩します。しかし、幼児児童生徒の可能性を信じ、一人一人に寄り添いながら、その子に合った学びを追求する姿勢こそ、本校が未来へ受け継いでいくべき専門性なのだと思います。
150周年という節目の年だからこそ、歴史を大切にするとともに、新しい時代の教育にも積極的に挑戦し、本校ならではの視覚障害教育をさらに発展させていきたいと考えています。
令和8年8月6日 筑波大学附属視覚特別支援学校 校長 森田 浩司

