このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
校長室から
受け継がれてきた専門性 ― 視覚障害教育の工夫と積み重ね ―
6月を迎えました。
今年は早くから暑い日が続いていますが、校内では子供たちがそれぞれの学習や活動に意欲的に取り組む姿が見られています。日々の教育活動の中で、改めて本校の専門性について考える機会も多くあります。
創立150周年を迎えた本年度、「校長室より」では本校の歴史や教育の歩みを振り返っています。5月は、本校が誕生した時代背景や、教育の機会を求める人々の願いについて紹介しました。
今回は、その願いを実現するために、先人たちがどのような工夫を重ねてきたのかについて触れてみたいと思います。

視覚障害教育の歴史は、「見えないからできない」という考え方ではなく、「どうすれば学べるか」を追求してきた歴史であると言えるかもしれません。
・文字を読むためにはどうしたらよいか。
・図形や地図、グラフを理解するためにはどうしたらよいか。
・安全に歩くためにはどのような力が必要か。
・将来、自立して生活し、社会の中で活躍するためにはどのような学びが必要か。
こうした問いに向き合いながら、多くの教職員が知恵を出し合い、教材や指導方法を工夫し、専門性を積み重ねてきました。
近年ではICTやデジタル技術の発展により、教育環境は大きく変化しました。しかし、どれほど技術が進歩しても変わらないものがあります。
それは、目の前の幼児児童生徒を理解し、一人一人にとって最も学びやすい方法を考える姿勢です。
視覚障害の状態は一人一人異なります。同じ教材や同じ方法が、すべての幼児児童生徒に適しているとは限りません。だからこそ、本校では長年にわたり、幼児児童生徒の実態に応じた指導や支援を大切にしてきました。
150年という歴史の中で受け継がれてきた専門性とは、特別な技術や知識だけではなく、「幼児児童生徒の可能性を信じ、一人一人に合った学びを追求する姿勢」そのものなのかもしれません。
これからも本校は、先人たちが築いてきた教育実践を大切にしながら、新しい知見や技術も取り入れ、幼児児童生徒たちの学びを支えていきたいと考えています。
150周年という節目の年に、改めて本校の専門性の意味を見つめ直し、次の時代へとつないでいきたいと思います。
令和8年6月22日 筑波大学附属視覚特別支援学校 校長 森田 浩司

