このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
校長室から
沖縄慰霊の日に寄せて ~平和を考える給食時間~
6月23日は「沖縄慰霊の日」。太平洋戦争末期の沖縄戦が終結したとされるこの日、沖縄県では戦没者を追悼する日として学校もお休みになり、毎年、正午には県内各地で黙とうが捧げられています。
私自身、この「慰霊の日」についてはニュースなどで耳にしたことはあるものの、正直なところ日付を意識して過ごすことは少なかったように思います。しかし先日、専攻科鍼灸手技療法科2年の宮城翔(みやぎ・かける)さんと、本校の栄養教諭・金居先生が校長室を訪ねてくれ、「6月23日の給食は沖縄料理にしようと思います」と教えてくれました。
沖縄出身の宮城さんが中心となって考案したこの日の献立は、「沖縄慰霊の日」にちなんで、「沖縄の文化を食を通して知ってもらいたい」、そして「この機会に沖縄の歴史や平和について少しでも考えるきっかけになれば」という思いが込められていました。
紹介文も添えられており、そこにはこんな言葉が綴られていました。
――――――(一部抜粋です)
「皆さんは今日、6月23日が何の日か知っていますか?
沖縄にとって、とても大切な『慰霊の日』です。
沖縄戦では、地上戦が行われ、多くの命が失われました。
空から爆弾が落ち、手りゅう弾や鉄砲で命を落とす人、不衛生な避難生活で病気になる人、食料が尽きて餓死する人…。
結果として、沖縄では約20万人、4人に1人が亡くなったといわれています。
この日は、そんな悲しい出来事を忘れず、平和を願う日です。
皆さんにも、『沖縄=きれいな海・美味しい食べ物』というイメージだけでなく、
『悲しい歴史を持つ場所』ということも、少しだけでも覚えてもらえたら嬉しいです。」
――――――
私は、この文章を読んで、胸が熱くなりました。日常の中にある給食という時間を、ただの「食べる時間」として終えるのではなく、歴史を知るきっかけにし、さらにそこから「平和とは何か」を考える時間へと昇華させていることに、深い感銘を受けました。
学校は、学力を伸ばす場であると同時に、人としての心を育む場所でもあります。そして、食は文化であり、心を伝える手段でもあります。だからこそ、こうした取り組みを通して、私たち教職員も学び、気づかされることがたくさんあるのだと、改めて感じました。
今日の給食で、子どもたちが「沖縄料理、美味しいね!」と感じたその先に、「なぜこの料理が今日なの?」という問いが生まれ、「戦争って何だろう」「平和ってどういうことだろう」と、自分なりに考える機会につながっていれば、それは何よりの学びです。
宮城さん、金居先生、心のこもった取り組みを本当にありがとうございました。
そして皆さんも、6月23日という日が「誰かの悲しみの記憶に寄り添う日」であり、「平和の大切さに思いを馳せる日」でもあることを、少しだけ覚えておいていただけたら幸いです。
令和7年6月23日 筑波大学附属視覚特別支援学校 校長 森田 浩司