筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

 このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。


12月の校長室から


 「12月の校長室から」をお読みくださり、ありがとうございます。
 令和5年(2023年)も最後の月になりました。皆さまにとっては「もう12月」、それとも「やっと12月」でしょうか。人によって感じ方は違いますが、一月後に新年を迎えるにあたり、この1年を振り返ってみてはいかがでしょうか。

 ご承知のように12月は、旧暦では師走。その意味や由来は諸説ありますが、いつもは落ち着いている教師(昔は僧侶や神職)も年末になると慌ただしく走り回るからという説があるそうです。なるほどそういう意味もあるのかと思う一方で、現代の学校は年中忙しいところなので、毎月が師走のように感じてしまいます。
 先生方の長時間労働は社会問題となり教員不足に拍車をかけています。忙し過ぎるままでよいはずはありません。文部科学省では、教師のこれまでの働き方を見直し、自らの授業を磨くとともに、その人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるよう、学校における働き方改革を提唱し、各学校では業務の精選や負担軽減に向けた工夫や取組に努めています。ここで大切なことは、教師の本分である授業そのものが負担過多であるとか、軽減させようという考えをもってはならないということです。このことに関連して、私はあるきっかけがあり「授業は45分・50分の真剣勝負」という言葉を使うようになりました。

 盲学校に勤務する前は、大きな病院に隣接する特別支援学校に勤務していました。病気のために長期入院・治療しながら学ぶことのできる学校でした。ある時、甲子園を夢見る野球少年で、勉強よりも野球が大好きな生徒が転校してきました。一見健康そうに見えましたが、病状は深刻でした。無事手術を終え、治療の合間にベッドサイドでの学習(訪問指導)が始まりました。教科書半分、野球の話題半分の授業に喜んでいましたが、徐々に悪化していきました。厳しい副作用のため、時おり横になったまま授業を受けるようになり、「体調が悪いから勉強できない。」という日も増えてきました。しばらくして、主治医から「彼は、あと数回しか授業を受けることができません。勉強できてよかったと思えるような授業をしてあげてください」と伝えられたのです。最後となった授業がどの単元だったか定かではありませんが、真剣勝負のつもりで彼と向き合ったことをはっきり覚えています。病室を出た後、涙が止まりませんでした。
 我々教師は授業を通じて児童生徒と向き合います。これが仕事であり、この仕事を選んだのです。だったら...。 教師にとっても、児童生徒にとっても一つ一つの授業は1回きり。働き方改革において教師の負担軽減の波が押し寄せても、授業は45分・50分の真剣一本勝負という思いを持ち続けたいものです。

 皆さまにおかれましては、健やかに年越しができるよう、ケガや病気に気をつけてお過ごしください。


令和5年12月1日
筑波大学附属視覚特別支援学校
校長 青木 隆一

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2023/12/1