筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

 このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。


10月の校長室から


 今年の夏は、気象庁が統計を取り始めてからの126年間で、最も暑かったそうです。個人的には、暑いというよりも暑さが痛いという感覚だったように思います。地球温暖化ではなく地球沸騰化という表現すら耳にするようになり、地球はどうなってしまうのだろうと不安になります。一方で、江戸時代から使われていたという「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句の通り、9月下旬なって過ごしやすい気候になってきたことに自然の摂理を感じつつ、子どもたちや先生方の安全を守る学校管理者としては、熱中症のリスクが去ったことにホッとしています。
 この慣用句はもう一つの意味があります。気候の変化から転じて「どんな困難があってもいつかは終わりが来て乗り越えることができる」というものです。今、教育界は様々な困難や課題を抱えています。少子化、いじめ・不登校対策、ICT教育、部活動の在り方、貧困等による教育格差、教員の働き方改革、教員の確保・人材育成、もちろん特別支援教育に関する困難や課題もあります。人によって感じる教育界の困難や課題は異なると思いますが、一つ共通していることは、暑さ寒さのように時が来れば自然に収まってくるものは一つもない、ということでしょうか。すでに中央教育審議会等でも議論され、すでに対策が取られているものあり、国・自治体・学校がそれぞれの立場で課題認識をし、実質的な動きをしていかなければなりません。
 さて、9月11日から2週間、本校で筑波大学の学生の教育実習が行われました。実習初日、私から「学校はブラック企業だとネガティブに言われていますが、やりがいのある職業です。この教育実習でそのやりがいを一つでも見付けてください」とお伝えしました。教職を目指す若い人たちの人材育成を意図したわけです。どの学生も表情が豊かで明朗であり、本校指導教員の指導や助言に熱心に耳を傾け、メモを取り、生徒とのコミュニケーションに努めていました。実習生控え室での様子をこっそり見に行くと、学生同士で情報交換をしていたり、教材作成や指導案作成に勤しんだり、実習生の心構えとして、Aランクの評価を差し上げたいところでした。
 模擬授業の後、評価を受けに校長室に来てくれた学生さんに、次のようなことを聞いてみました。
 「実習を通じてこの職業について感じたことがたくさんあると思いますが、将来、教職に就きますか?」
 「教員になってくれないかなぁ。」という私の心の声を感じ取ってくれたのでしょうか、「いいえ。」という学生はいませんでしたが、その表情や口調から悩んでいる様子が伺えた学生さんもおりました。話はさかのぼりますが、私が最終的に教員になることを決めたのは、教育実習で指導してくれた先生が「きっといい先生になれるよ。」と励ましてくれたことが大きく影響しています。実習中遅刻をし、満足に指導案もかけず、実習授業では生徒に間違ったことを教えた自分にそんな言葉をかけてくれたのです。あの時、この励ましの言葉がなかったら。そんなことを思い出しながら、「あなたはきっといい先生になれる。一緒に働ける日が来ることを楽しみにしています。」と言葉をかけて、校長室から送り出しました。
 ほんの些細なことですが、先に述べた「教員の確保・人材育成」という教育界の喫緊の課題への実質的な動きになるのならば、幸いです。

令和5年10月1日
筑波大学附属視覚特別支援学校
校長 青木 隆一

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2023/10/2