筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

 このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。


9月の校長室から


 本校は8月30日が夏休み明けの始業日でした。子どもたちの元気な声が響く本来の学校らしさが戻ってきました。今年は例年以上の猛烈に暑い夏だったそうで、特に7月は全国の平均気温がこの100年余りで最も高かったそうです。夏休み中、空調の効いた自宅で過ごすことが長かったでしょうから、身体が慣れるまで時間がかかるかもしれません。引き続き熱中症対策をはじめ、体調管理に気を付けてもらいたいものです。
 さて、ちょうど1年前の8月下旬から9月上旬にかけて、我が国の特別支援教育の在り方に激震が走りました。国連障害者権利条約の締結国である日本に対して、障害者権利委員会による対日審査(建設的対話)が8月22日・23日にスイスのジュネーブで行われ、それを踏まえた懸念・勧告(総括所見)が9月9日に公表されたのです。報道でも大きく取り上げられたので覚えている方も多いのではないでしょうか。条約第24条教育については、「分離特別教育を終わらせることを目的として,障害のある児童が障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)を受ける権利があることを認識すること。」という厳しい内容でした。確かに、盲学校を含む特別支援学校(以下「盲学校」)は小中学校等とは別に存在しており、いわゆる分離された学びの場であることは事実です。盲学校関係者の中には、その存在を否定されたように感じ取った方や、盲学校がなくなってしまうのではないかという不安に駆られた方も多いと思います。しかし、9月13日、文部科学大臣は記者会見で、「多様な学びの場において行われている特別支援教育を中止することは考えていない」などと声明を発表し、ホッと胸をなでおろしたわけです。
 しかし、この問題を単に「盲学校がなくならないで良かった。」で終わりにしてはならないと思っています。我が国は、障害のある子どもたち、いや障害の有無ではなく多様性のある全ての子どもたちが、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会で生きていくことが期待され、そのような社会(共生社会)づくりを目指しています。その出発点がインクルーシブ教育システムであるといっても過言ではないでしょう。そこでは、障害のある子どもと障害のない子どもが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付け、できるだけ同じ場で共に学べるようにしていくことが求められます。対政府勧告の主旨を踏まえ、国も地方自治体も各学校も今まで以上に考え、実践していかなければなりません。  あの勧告から早くも1年が経過します。この先どうなっていくのでしょうか、大きな変化があるのでしょうか。しかし、たとえ制度がどう変わっても視覚障害教育そのものは続きます。目の前にいる、見えない・見えにくい幼児児童生徒を成長を信じ、毎日の教育活動を着実にやっていこう、本校の役割をしっかり果たしていこうと思いながら、夏の終わりを迎えました。

令和5年9月1日
筑波大学附属視覚特別支援学校
校長 青木 隆一

学校長挨拶 トップに戻る

2023/9/1