(1)座席の位置
文部科学省の基準によれば、視力が 0.3 ある場合は、最前列に座ることで黒板の文字が読めることになっています。弱視児童生徒の多くは、0.3 未満なので通常は前列であっても黒板の文字を読むためには困難が生じます。また、見えやすさは視力だけではなく、視野やまぶしさなどを考慮する必要があります。黒板の前まで移動して見ることを考えると、最前列の位置 (黒板からおおむね2mから3mくらい)に着席することが望まれます。
その後 、弱視レンズなどの補助具を使うことで着席位置を調整することもあります。
教室の窓は一般的には南を向いています。窓から差し込む光は、多くの弱視児童生徒がまぶしさを感じます。(このように明るさの変化によって視力が変わったり、不快感が現れたりすることを羞明といいます。)直射日光は、夏は高い位置から差し込み奥まで届かないことがありますが、冬は教室の奥まで達します。窓際は、年間を通じてまぶしさを感じやすいので、配慮が必要です。また、窓から差し込む光が黒板に反射することがあります。廊下側であっても黒板が見えにくいことがあるので、遮光カーテン等を使用して明るさを調節することも必要です。通常の教室は、遮光カーテンを使用しても文部科学省の照度基準を下回ることはほとんどありません。しかし、一般の児童はこの明るさで十分ですが、弱視児童生徒は視対象によっては明るい方が見やすい状況があります。様々な天候時に教室のいろいろな場所に座ってみて、適切な席を検討するとよいです。
(2)机の選択と配置
弱視児童生徒には、机を2台用意するとよいです。正面に書見台が置ける机、側方に拡大読書器などを置く机を用意します。拡大読書器を置く机の高さが低いと、画面が弱視児童生徒の視線に合わせやすくなるとともに、拡大読書器が後方の児童生徒の視認を妨げることを防止します。
(3)靴箱やロッカーなどの位置
靴箱やロッカーなどの位置は環境に慣れるまで、見つけやすい所に設けます。例えば「左端の、一番上 」などというように覚えやすい位置にします。弱視児童生徒には蛍光色などの見やすいシールや、黒地に白文字の記名をしておくと見つけやすくなります。
自分の持ち物や教室にあるフック、他の児童と共用する掃除用具ロッカー、備品にもわかりやすい記名をしたり印を付けたりするとよいです。児童が自分でできることが増え、周囲の児童への理解や啓発にも繋がります。
ロッカーに蛍光シールを貼る例 | 靴箱の例 |