筑波大学附属視覚特別支援学校のWEB

英語教育


1.中学部における英語教育

 中学部の英語の授業では、聞く、話す、読む、書くの4技能のバランスに留意し、3学年を通して、自ら積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育むことを目指しています。具体的には、実際に英語を使ってお互いの考えや気持ちを伝え合ったり、英語を読むことに慣れ親しみ、英語を読んで書き手の意向などを理解したり、学習した英語を用いて自分の考えなどを書くことができるようになることを目標に指導を行っています。
 また、生きた英語に触れ、言語や文化に対する理解を深めるためにも、週に1時間程度、ALT(*1)を交えたティームティーチングを実施しています。
 中学部では文字指導を効率的に行うため、生徒それぞれの使用文字に合わせ、A組(点字使用クラス)とB組(墨字使用クラス)に分けています。
 A組の1年次では、アルファベットや文章記号などの基本的なルールを学習します。この段階では、墨字のアルファベットと点字のアルファベットは1対1で対応しています。2年次からは、英語学習と並行し、統一英語点字(UEB)という縮約を学習していきます。統一英語点字とは、かつては2級点字と呼ばれていましたが、1つの単語を1マスや2マスの点字に短く表したり、単語の全体や一部を縮めて表記することによって、英語の読み書きを早くすることができるものです。視覚障害特別支援学校では、この統一英語点字を、2年・3年で使用する点字教科書の巻数に合わせ、7段階に分けて指導しています。よって、中学部を卒業する時には、統一英語点字をすべて学習し終えますので、高等部の点字教科書や英語圏で使われている英語の文章を読むためのルールを習得することになります。
 B組における文字指導については、特に中1段階において丁寧にきめ細かく文字指導を行っています。弱視の生徒は、bとhやaとo、Iとlなどを読み間違えることがあります。ですので、定期試験でもこれらの誤読が起きないようなフォントを使ったり、個々の読みやすい文字の大きさで問題を作成するなどの配慮を行っています。また、今では当たり前のように給与されている拡大教科書ですが、2001年度以前はまったく出版されていませんでした。1990年代後半から、本校英語科が中心になって研究を積み重ね、2002年度からの英語の拡大教科書の発行にこぎつけたという経緯があります。
 中学部では、目標として、2年時に英検(*2)4級、3年時に3級を受験することを推奨しています。但し、4級の点字問題では統一英語点字は使われていませんが、3級以上では使われていますので、3年時の前半で3級以上を受験する場合、統一英語点字の先取り学習が必要になります。
 放課後の活動になりますが、筑波大学附属11校で進められている「English Room」という活動を週1回程度実施しています。これは、生徒とネイティブスピーカーが教科書を使わず、自由に英会話を楽しむというプログラムです。

2.高等部における英語教育

 高等部の英語の授業では、中学部で積み重ねてきた基礎の上に、近年のグローバル化の進展や情報化を考慮し、情報や考えなどを的確に理解したり、適切に伝えたりするコミュニケーション能力を育むことにより、言語や文化に対する感性を高め、広い視野や国際感覚・国際協調の精神を備えた人材を育成することを目指しています。普通科の教育課程では、学習指導要領改訂によりその都度科目は変わりますが、一貫して高1で週4時間、高2で週5時間、高3で週5時間の単位数を確保しています。
 高等部では、中学部と異なり、点字使用生徒と墨字使用生徒の混合でクラスを編成しています。高1では、α・βという均質なクラス分けを行っていますが、2年時からは習熟度別にクラスを編成し、生徒それぞれの到達度や進路の目標に合わせた授業を展開しています。
 高等部でも中学部と同様、週に1時間程度、ALTを交えたティームティーチングの時間を設けています。学年が上がると、ALTの出身国の文化や慣習について話を聞いたり、国際的な問題について議論したりすることもあります。
 高等部では、目標として、2年時に英検準2級、3年時に2級を受験することを推奨しています。中には、準1級や1級に挑戦する生徒もいます。
 若干名ですが、文部科学省が実施している「トビタテ!留学JAPAN」に応募し、3週間程度、外国で短期研修を行い、国際的な視野を広げて帰ってくる生徒もいます。また、2年に1度開催されている「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」に参加する生徒もいます。このような体験を積み重ね、語学や国際関係に関心を持ち、進学先の大学で留学したり、国際的に活躍している卒業生もいます。
 高等部のEnglish Roomでは、生徒全員がネイティブスピーカーと個別に話したり、グループで討論するという時間を設けています。
 クラブ活動にはなりますが、高等部には国際交流部があり、ハンズオン東京の方と2か月に1回程度交流させていただいており、部員の英語力の向上はもちろん、国際感覚や国際協調の精神の涵養にご協力いただいています。

*1 ALT(assistant language teacher)
 本校では、1993(平成5)年から英語のネイティブスピーカーが非常勤の時間講師として、中学部1年から高等部3年までの授業に、テイームテイーチングの形で加わっていただいています。
 それ以前にも、1960年代頃からCWAJ(College Woemen's Association Japan Volunteers for the Visually Impaired)の方に、授業の補助員としてボランティアでご協力いただいていたという経緯があります。現在でも、CWAJには年に2回、希望生徒に対し、英検の面接練習を実施していただいています。

*2 英検
 実用英語技能検定では、視覚障害者のためにいくつかの受験上の配慮がなされています。
 1995年から、視覚障害者も各都道府県で指定される一般会場の別室で受験できるようになりました。96年からは年2回、2001年からは年3回受験できるようになっています。
 受験媒体についても、従来からの点字での受験に加え、1998年からはレイアウトを変更した18ポイント、A4判と25ポイント、A3判の拡大文字の試験問題が提供されています。
 時間延長については、障害者手帳を有している受験生に対し、点字・拡大文字ともに1.5倍の試験時間が認められています。尚、リスニング問題のインターバルは2倍になっています。
 また、ルーペや拡大読書器などの視覚補助具の持ち込みも認められています。
 尚、本校英語科では一部の過去の点字の試験問題データを所蔵しておりますので、ご入用の方はお問合せ下さい。また、日本点字図書館は、紙媒体での貸し出しを行っています。

2020/06/05