現メンバーは,全体から3名,幼・小・中・高普通科・音楽科・理療科・理学療法科から各1名,舎から3名,校長・教頭の15名で構成している。
(1) 直接的には,まず校舎の大型改修のために教室再配置を行うことになり,その基礎となる生徒数の動向等の将来的な見通しが必要になったこと。また校舎の改修に引き続いて寄宿舎の改修が予定され,学校全体の10〜20年の将来的見通しが必要になったこと。
(2) 同時に,ここ数年幼小学部の児童数が激減し,中学部への波及も懸念されてきたこと。一方,職業課程である理療科・理学療法科のスクラップ・アンド・ビルドとしての筑波身障短大が構想され,これらへの対応として将来構想が必要になったこと。
(3) 本校の将来計画委員会は,東京教育大学の筑波大学への移転再編の過程で,附属校としてのあり方が問われたときに生まれた(第1期将来計画委会)。筑波大学は政府文部省のモデル大学として構想され,今日の行政改革や教育臨調を先取りする実験校,つまり「先導的試行」校であった。そのため,本校は常にその存在意義を文部行政の側からも問われ続けてきた。
校舎改修の実務的な将来計画委員会としての第2期将来計画委員会を発展的に解消し,1985年8月末に発足したのが現将来計画委員会(第2期将来計画委員会)である。現委員会では発足以来,校内各部科の議論,各部科の利害の違いをできるだけ広い視野から,また根本的なところから検討しようとしている。そのため,1988年春にはメンバー全員による合宿をおこない,この夏までに次の(1)〜(3)について,一つの校内検討案を出そうとしている。
(1) 全国的な視覚障害児童生徒の数的な動向および視覚障害教育の質的な動向
(2) 本校の過去10以上にわたる生徒の動向,教育内容の点検・総括
(3) (1)(2)の上にたった寄宿舎改修案の立案,将来構想の検討
(1) 本校は筑波大学の附属学校として管理運営上,両者の間には不断の緊張・対立がある。筑波技術短大問題もこの分脈の中から生じた一つと言えよう。
(2) 筑波大学には心身障害学系(一般大学の教育学部特殊教育学科に相当)があり,筑波大学附属10校のうち4校が,盲,聾,精薄養護,肢体不自由養護があるが相互の関係は一部を除き希薄である。また,理療科教員養成施設も旧東京教育大学跡地(現在筑波大学学校教育部が置かれている場所)に移転したため本校との関係は薄くなってきている。本校の筑波地区への移転は,ほとんど有り得ない状況にある。
(3) 校長は筑波大学教授との兼任である。現校長は本校出身者であるが,従来は障害教育と全く関わり合の無い教授が多かった。
(1) 生徒総数 234名,教職員91名(教員76名,寮母15名)である[87'・5]。在籍者数が定員を大きく割っているのは,幼小・保理科・音楽科である。幼小学部には舎生がいない。保理科は中卒者で成人で中途失明者を対象としている。なお,幼稚部以外には入試選抜がある。
(2) 教員の異動が少ない。本校は普通,幼小学部,中高(普通科・音楽科),専攻科(理療科・理学療法科),寄宿舎に分かれて運営されている。
関視研自由分科会の昨年の議論を踏まえると,盲学校は,
(1) 視覚障害児童生徒数の減少
(2) 重複障害児童生徒の増加と障害の多様化
(3) 卒業後の進路保障の困難化(理療とその他)
を抱え,従来の盲学校の教育内容・進路指導では対応できなくなっている。また,盲学校を含めた教員の異動が激しく,盲教育の専門性が無くなってきているといえよう。
昨年(1997年)の関視研で千葉盲(私見)が整理しているように,現状の盲学校は
(1) 普通教育に準拠した教育の保障
(2) 重複児童生徒の教育,発達保障
(3) 職業教育の確立(理療教育の充実)
の3点を担っているが,今後「地区をも包含して教育体系を検討する必要があ る」として,6つの方向を示している。
ア.現状のように,上記の3本柱を総合した教育
イ.重複教育を専門とした養護部(仮称)または総合養護学校として独立
ウ.普通教育に準拠した教育と職業教育
エ.義務制と高等部(職業教育)
オ.職業教育の分離
カ.普通教育は統合教育に委ねる(弱視学級または普通学級へ)
本校を含め,どの盲学校においてもこうした方向のいずれかの選択か,あるいは別の方向の検討をすべきと考える。同じく昨年の関視研での埼玉盲のレポートは,このうちアからイへの方向を打ち出しているように思われた。
(1) 幼小:「昭和62年度全国盲学校小学部児童数」・「本校小学部児童数の変化」
(2) 中高:「高等部入学者・卒業者の推移」
(1) 小学部:次の3項目による将来構想を検討している。
ア.単一障害の児童に対する教育を保障するために,現状の通学生だけを対象とせず広域的な募集を行う。この場合,中学部への連絡入学が不可欠である。
イ.幼稚部から継続して行う重複障害児への教育
ウ.盲教育センター的役割を果たす
(2) 中高:従来のように単一障害の生徒に対する教育を継続しながら,統合教育すなわち普通学級・学校に在籍する生徒への積極的な援助を行う「センター」的役割を果たす。
(3) 専攻科:筑波技術短大設立に関して,文部省は本校の組織を改変・移転することはないとしている。これを受けて,理療科・理学療法科は次のように検討を行った。
ア.理療科・短大との組織合併が困難である以上,独自な路線を検討せざるを得ない。
イ.理学療法科・短大との共存は難しい点が多い。(・学生の実習病院の確保,・教員の確保,・視覚障害の理学療法科設立の認可条件が全国で3校等。)
(1) 視覚障害者は減少しているだろうか。
盲学校,特に幼小学部の在籍者数が激減している。中高では盲学校へのUターン現象も見られる。一方,視覚障害者の数は減っておらず,多様化・重度化しているとの意見もある。
(2) 「統合教育」をどのようにとらえるか。
幼小段階ではごく普通に普通校で学べるようになった反面,責任を持って,その子どもたちの教育の保障を行うところが無い。大学進学時においては入試点訳等で問題が生じてきている。統合教育を受けているのは弱視生が多いが,放置されていることが多い。
(3) 地方の盲学校の将来像は今後どうなって行くか。
特に幼小学部については従来の学校形態の維持は困難であり,1県1校で「分校場」(普通校などに併設)のような学校形態で存続して行くのではないか。
(4) 単一障害児童生徒の教育の保障をどのように行うか。
本校は盲の単一障害教育を行う場として盲教育を継承して行く。将来的には 単一障害児童生徒の教育を担うと考えられる「統合教育」への援助,あるいは 実験を行う場として「センター」的役割を果して行く。
(5) 重複児童生徒の教育の着手。
国立大学の附属学校としては遅すぎたが,当然やるべきこととと考えている。 国立特殊教育総合研究所との関連,筑波大学心身障害学系および4特殊附属校の連携を行いながら取り組む。ただし中学部以上は,中高の将来計画と別建て(組 織・敷地など)で考えて行くことを検討している。また,着手に当たっては公立校との調節は不可欠と考えている。
(文責:岩崎洋二:筑波大学附属盲学校・将来計画委員会)