日本における凸起文字
すべての盲教育創始者は読書用文字について苦心した。そして等しく凸起文字を使用している。
- 紙撚(こより)文字
厚紙の上にのりをつけた紙撚で字形を作ったもの。漢句は紙撚を2本ならべて貼り付け、和歌は1本で著している。
- 松脂文字
「折板を温湯の上に置き、溶解した松脂で書き、生じた凸形文字」とある。文字だけでなく楽譜・地図をも書いたという。松脂文字の楽譜が残っている。
- ろう盤文字
西欧では18世紀後半以降広く行われた方法で、我が国では京都盲唖院、楽善会訓盲院ともに使用している。ろうを鍋に入れて煮、溶解するときブリキ盤に流し込み乾燥してから竹ヘラ、銅ヘラ等で字形、物形を刻んだ。それを指で触って理解させた。
- 瓦文字(陶器文字)
明治13年「盲人飯島静謙来り日く、自分輩学問用に製せし地球儀其外木刻塗物様の五十音等諸器を献じたき旨を申入る。之を許諾す」と記録に残っている。飯島という盲人が、自分で焼窯を作り本器を製作したという。4㎝×3㎝の瓦片に文字を浮き出している。
- 木刻漆塗文字
「明治9年頃楽善会員諸氏が、本校創設に熱中し居る際に、盲人某氏が教授用として本器を工夫し寄贈したるものなり」(高津柏樹氏談)の貼付紙がある。
2種あり、1つは16.5㎝×6.5㎝の板に、片面に文字を、他の面には筆順に分解して凸字で作られている。別に、8.3㎝×6㎝の板に文字が凸字で出ているものがある。
- 木刻凸凹文字
4.5㎝四方の木版の表に凸文字、裏に凹文字を刻したものである。当時の大蔵省書記官得能良介氏が製作寄付したもので、別に、高津柏樹らによって工夫されたものがあったらしい。