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視覚障害を伴う重複障害は、知的な遅れや肢体不自由、聾、難聴など多様であり、それらの障害に応じて独自の指導がなされています。ある児童には効果のある指導が、別の児童には効果がない場合もあります。指導者は児童がモチベーションを持って取り組めるよう指導方法を考えることが必要です。
白杖指導を行うことで次のような基礎的能力の向上を期待できます。
重複障害児に白杖指導を行う場合、まず初めに児童の行動評価を行い、白杖指導が可能かどうかを判断します。指導に当たり保護者及び担任、必要に応じて理学療法士や医師と連携します。
白杖指導が可能である場合は、次のような安全の基礎的ルールを強調しておくことが重要です。
以下に本校で行っている指導について紹介します。
屋内歩行:玄関下駄箱から自分の教室、教室からトイレ、特別教室など、日常的に利用する場所へ、白杖を使わないで移動する練習を行います。教室の入口には視覚的な手がかり、鈴などの聴覚的手がかり、触察できる印などを取り付けておきます。
白杖歩行:手引き歩行と単独歩行を想定して、白杖を保持し続けることを最初の目標として指導を行います。保持し続けられない場合は、指導者が白杖を持ち、それを児童生徒に握らせて歩くことで徐々に慣れさせていきます。自分で白杖を保持できる場合は、前方に構えたまま、廊下、段差、スロープなどを歩き、学校敷地内にある様々な環境についての知識を増やします。指導者が児童生徒の傍で指示を出したり、褒めたり、励ましたりしながら、一人で歩く経験を積み重ねることで自信を醸成していきます。
歩行の発達に遅れが見られる場合は、脚力やバランス力を養うために階段昇降や段差・スロープの上り下りなどを継続的に行っています。
校外における単独歩行は、完全に一人で歩行するのではなく、保護者や介助者に傍らで見守られながら一人で歩く、「見守り付き単独歩行」を想定して指導を行っています。受動的ではなく能動的に歩く意欲を育てるために、安全な場所や慣れている場所では、白杖を持って一人で歩く機会を設けてもらうよう保護者に協力をお願いしています。