このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
1月の校長室から
「1月の校長室から」をお読みくださり、ありがとうございます。
昨年も多くの皆様から本校の教育活動に対して温かいご支援とご理解を賜り、誠にありがとうございました。おかげさまで、大きな事故もなく1年を終えることができました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。
令和7年(2025年)も職員一同、視覚障害教育のフロントランナー校として一歩一歩着実に歩んでまいります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
さて、今年は巳年ですね。年男・年女の方もいらっしゃるかと思いますが、実は私も年男に当たります。定年年齢が少し延びたとはいえ、ライフワークとして続けてきた視覚障害教育の集大成をどのように迎えるべきか、改めて考えさせられる年となりそうです。初詣では「自分自身と家族の健康、そして附属視覚特別支援学校の安寧」を祈願しました。御賽銭も奮発しましたので、きっと願いが叶うものと信じています。
ところで、皆さんは「生成AI」と呼ばれるチャットサービスを利用されたことがありますか? 従来のAIが「解析や判断を行う」ものであるのに対し、生成AIは「新しいものを創造する」能力を備えています。テキストはもちろん、画像や音声、音楽などの新しいコンテンツを生み出すことが可能となっているのです。たとえば、プロンプト(AIに与える指示や質問)が明確であれば、精度の高いスライド資料を数秒で作成することもできます。
巳年にちなみ、盲児に「ヘビ」をどうやって教えるか、少し想像してみてください。
私は生成AIに「ヘビを見たことのない子供にヘビをどうやって教えますか」と指示してみたところ、数秒で以下のような回答が得られました。
「ヘビは足がないけれど地面を滑るように動く細長い動物で、体は鱗で覆われ、滑らかで冷たい感触を持つと伝えます。おもちゃや動画を使い、動きや形を具体的に示すと子供が理解しやすくなります。」
次に、「ヘビを見たことも触ったこともない全盲の子供にヘビをどうやって教えますか?」と指示したところ、以下のような回答が返ってきました。
「全盲の子供にヘビを教えるには、視覚以外の感覚や抽象的な説明を活用し、彼らが理解しやすいように工夫する必要があります。以下のようなアプローチが考えられます。
〇触覚を利用する
・可能であれば、安全な方法でヘビに似た質感や形状のものを触ってもらいます。
・形状の説明:細長い棒やロープのような形状を触らせ、「これがヘビの体の形だよ」と伝える。
・表面の質感:ゴム製や滑らかな素材(例えばヘビのおもちゃや模型)を触らせ、「ヘビの皮膚はこんな感じで滑らかだよ」と教える。
・動きの再現:指やロープを使い、ヘビのように曲がりながら動く感覚を再現する。
留意点
・子供がヘビに対して恐怖心を抱かないよう、ポジティブで興味深い点を強調します。
・実物に触れる際は、安全性を最優先に考え、専門家の監督下で行う必要があります。
「盲児」というキーワードを追加するだけで、回答がより具体的かつ的確に変わりました。生成AIが導き出した回答は、皆さんのイメージに近い指導方法だったのではないでしょうか。このように、生成AIの進化とその精度の高さには感嘆させられます。学び方そのものが大きく変わっていく時代が到来したと言えるでしょう。
一方で、生成AIの活用方法を誤れば、学習指導要領で重視されている「思考力」「判断力」「表現力」、さらには「問題解決能力」や「創造力」の育成に悪影響を及ぼす可能性もあります。適切な活用方法をしっかり教えていくことが、教育現場における重要な課題となるでしょう。私たち教師は、子供たちを取り巻く環境がどれほど変化しようとも、人間だからこそ持つ教育の強みを発揮し、子供たちが確かな「生きる力」を身に付けられるよう努めていきたいものですね。
令和7年(2025年)が皆さまにとって健やかで飛躍の1年となり、素晴らしい未来へとつながる年でありますよう、心からお祈り申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
令和7年元旦
筑波大学附属視覚特別支援学校
校長 青木 隆一