このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
12月の校長室から
12月の校長室からにお越しくださり、ありがとうございます。
もう12月、師走。時の流れの早さに驚いています。時刻の進みは万人共通なのに。自分が歳をとったからかなとも思いますが、学校で流れる時は早く感じられるようです。
現実を見据えれば、次年度以降のことも考え始めていなければならない時期です。人事のこと、学校組織のこと、働き方改革のこと、教育課程のこと、もっと先の学校将来像のことなど枚挙に暇がありません。特に人事関連は、学生の教職離れによる教員不足の影響が附属学校にも押し寄せており、悩ましい状況です。立ち止まることはできませんので、公立学校とは異なる附属学校ならではのシステムや文化も踏まえつつ、最適解を見出していこうと思います。
さて、先週23日、肌寒い秋晴れのもと本校幼稚部の「みんなのうんどうかい」が開催されました。おそらく日本で時期的に一番遅い運動会でしょう。保護者・ご家族の皆さんが見守るなか、3歳~5歳までの幼児たちが「いちについて、よ~いドン!」で音源に向かって懸命に走り、「レッツゴー!たんけんたい」で平均台や鉄棒などの課題を乗り越え、「アブラハムには7人の子」にあわせてご家族と一緒にかわいらしくダンスする様子は、全国の大トリにふさわしい素敵で温かい運動会でした。
印象に残っているのは、子どもたちの自発的な動きや発声を「待つ」時間がしっかり確保されていたこと。運動会のような行事では時間管理が大切にされますが、「待つ」時間を想定して、ゆとりのあるプログラム進行が計画されていました。お子さんによっては、一歩一歩進むためゴールするのに時間がかかります。時にはコースを外れることもあります。自分の思いを表出するのが苦手な子どもいます。ついつい教師が誘導したり、代弁したり。この運動会では教師も家族もじっと待ちました。「〇〇さん頑張れ、頑張れ!」という心の声が聞こえてきそうでした。また、車椅子使用のお子さんは、大人が押す車椅子に乗って単にコースを巡るのではなく、身体の回転運動や体育館フロアを滑る感覚を直接味わえるよう配慮がなされていました。そのお子さん、この感覚をきっと忘れないでしょう。そして、子どもたちが見事やり遂げたあとは、温かい拍手がそのお子さんを包み込んでいました。一人一人が主役になった瞬間でした。終了後、ある幼児のお父さんが、御挨拶にきてくださり、「自宅とは異なる我が子の様子を見ることができました。あんなにできるなんて感動しました。本当にありがとうございました。」とおっしゃってくださいました。教師にとっては最高のエールですね。
見えない・見えにくい幼児の成長はゆっくりかもしれませんが、学校での適切な教育と家庭での愛情、両者の円滑な連携が相互に作用して確実に成長します。それを実感できた一日だったと思います。
確かに学校は行事が多く大変な職場ですが、捨てもんじゃありません。もしも学生さんが読んでくださっているとしたら、こうお伝えしたい。
教職はやりがいがあります。子どものために一緒に汗をながそう!
※画像は「みんなのうんどうかい」の一コマです。
「レッツゴー!たんけんたい」で幼児が梯子を触って確かめながら渡っている場面を、先生が後ろでじっと見守っている画像です。
令和6年12月1日
筑波大学附属視覚特別支援学校
校長 青木 隆一