このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
10月の校長室から
今月は、1日の第39回関東地区盲学校卓球大会への参加を皮切りに、音楽科定期演奏会、幼小学部運動会、理療教育研究セミナー、2泊3日の高等部1年秋学校・・・と各学部科等での様々な行事や大会等が実施されています。
今年度の定期演奏会は、筑波大学50周年記念のプレ行事としても位置付け、高等部音楽科、専攻科音楽科に在籍する生徒たちが、ピアノ、バイオリン等の演奏やソプラノを発表するとともに、和太鼓アンサンブル「空へ」(2021年度本校音楽科生徒による作曲、和太鼓奏者片岡亮太さん編曲)では、身体と心に響く力強い演奏を披露してくれました。
3年ぶりの大会開催となった関東地区盲学校卓球大会は、無観客での実施となったため、応援に行くことができなかったのですが、高等部男子・女子の部、ダブル優勝を始め、生徒たちの活躍の様子について報告がありました。日頃の練習の成果を充分に発揮するとともに、大会特有の緊張感、達成感と挫折感を味わうことができ、生徒たちにとって貴重な体験になったのではないかと思います。
幼稚部、小学部低学年は、それぞれ、板橋区の農園、筑波大学附属の坂戸高校でお芋ほり。
幼稚部は、お芋ほりが初めてのお子さんや土が苦手なお子さんもいることもあり、じっくりと事前の取組を行いました。砂場で砂に埋めた宝を探すという「宝探し」の活動を行い、掘ったり、引っ張ったりといった体験をしたり、砂の感触に親しんできました。当日は秋晴れの下、畑でのお芋ほり。表面は乾いて少し硬かった土を掘り進めていくと、ひんやりと湿った土が出てきて、お芋発見。「おいもあった!」と土の中からお芋を発見しても、そのお芋を掘り出すまでが大変だったようです。砂場での宝探しのようにすぐに引き抜くことができなかったようですが、土の中の大きな大きなお芋を掘ることを全身で味わうことができた貴重な体験となりました。
小学部は、10月末に「芋ほり遠足」として計画し、芋ほり、焼き芋に加え、ブタやニワトリなどの家畜を見学したり、生みたての卵に触ったり、どんぐり集めをしたりなど、様々な体験をする予定です。今までも、各クラス後に、本物のさつまいもに触って、形や大きさ、重さなどを調べたり、焼き芋のにおいや温かさを感じたり、「焼き芋グーチーパー」の歌を楽しんだりと芋ほり遠足に向けた学習を進めてきましたが、昨日は、1・2年生が寄宿舎前の学級菜園でお芋ほり。お芋の葉がたくさんついたツルをたどっていって、土を掘り、「あったー、お芋あったよ!」とお芋にたどりついたものの、周りを覆っている土の中からお芋を引っ張り出すことに四苦八苦しながらお芋を掘り起こしていました。「大きい!」、「一つのツルに(お芋が)2個ついてる」、「小さいお芋と大きいお芋がつながっている」など、あちこちから子どもたちの楽しそうな声が聞こえていました。
こうした中、子どもたちの成長を実感する嬉しいできごとがありました。エピソードを紹介します。
少しずつ、点字を読むことができるようになってきた児童が、廊下を移動しながら、教室表示プレートに触り、「かいぎしつ」、「いちろくよん(教室番号164)」、「かんりしつ」、「たいいくかん」と次々と読んでいきました。今まで、点字表記には触っていたものの、それをしっかりと文字として認識し、書かれている文字を読み、そこが何をする場所なのか、誰がいる部屋なのか等を確かめている姿に、大きな成長を感じました。
そして、もう一つ。視覚と聴覚の両方に障害のある盲ろうの児童。教育活動の中で、大好きな音や音楽を聞き取り、楽しむことはできても、自分から音声で伝えるということは難しく、サインや仕草で自らの思いを伝えていました。先日、その児童の担任から、「音声模倣をしました! 身体を回転させる遊びの時に、(教師の声掛けである)『トゥルルルルル・・・』の声を模倣し、『トゥルルルルル・・・』と自ら発して楽しんでいました。」と嬉しい報告がありました。楽しい遊びに心が動いたからこそ、声を発して、楽しい思いを共有したのだと思います。
令和4年10月26日
筑波大学附属視覚特別支援学校 校長 星 祐子