このページでは筑波大学附属視覚特別支援学校長より、このWebをご覧になった方へご挨拶申し上げます。
7月の校長室から
この間の豪雨・土石流被害によって亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様にお悔やみ申し上げ、これ以上、被害が拡大しないことを心から願っております。
まもなく、梅雨が明け、夏本番を迎えます。
先日、体育館にて高等部朗読劇発表会が行われました。新型コロナ感染症拡大により文化祭を開催することが難しいため、昨年度に引き続き、高等部は「朗読劇発表会」を開催、各学年2グループに分かれ、脚本、演出、役者等を生徒たちによって創り上げてきた朗読劇を発表し合いました。
今年度のテーマは「極」、開会式で挨拶した実行委員は、「声で発表することを極めていこう、朗読劇発表会を極めていこう」といった思いでテーマを決めたと説明していましたが、各20分間ほどの持ち時間に、それぞれのグループが思いを込めて、緊張の表情を見せながらも生き生きと演じていきました。
入学してまだ3・4か月の1年生は、朗読劇の発表まで慣れないことの連続だったと思いますが、「銀河鉄道の夜」や「桃太郎」「鬼滅の刃」にヒントを得た内容をもとに、しっかりとまとめあげていましたし、2年生は昨年度の経験が活かされているのでしょうか、ことばだけではなく、効果音も使っての演出がイメージをより膨らませていました。そして、さすが3年生、何気ない日常や社会の歪みに目を向け、それを劇中に取り入れて、メッセージとして伝えていました。6チーム、文学や昔話、アニメ、童謡、日常生活に題材など、さまざまなジャンルの内容で、そして、「周囲の人たちへの感謝を忘れずに、人との繋がりを大切に日々の生活を送っていくことの大切さ」、「人は誰でも皆、生きていく意味を持っている、自分たちの未来は自分たちの手で切り拓いていく」といったメッセージも込められた朗読劇となっていました。
ことばで伝える、そして、聞き手が、そのことばでイメージを拡げていくという空間の中で、ことばはコミュニケーション手段であるだけでなく、思考する、感情を共有する手段であることを実感しました。限られた時間の中で、話し合いがまとまらず、大変な思いをしたこともあったようですが、終了後、「楽しかった!」という声があちこちから聞こえ、充実感、達成感に満ちた表情をしていた生徒たち、一人ひとりの生徒たちがそれぞれに関わりながら、主体的に行事を創り上げながら楽しむ姿、とても嬉しく頼もしく感じました。
高等部の生徒たちが難なく言語を使いこなしている姿を見ながら、育ちにおいて、実体験とことばを結びつけていくことの大切さを改めて感じました。視覚に障害のある子どもたちは、ことばは聞いたことがあっても実際には触ったことがない、見たことがない、体験したことがないといったことがありがちです。特に、幼少期においては、意図的・系統的な体験を用意し、体験に基づくイメージの形成、言語化により概念形成を図っていくことが大切になります。日々の生活の中での「体験」を大事にしていきたいと思います。
令和3年7月13日
筑波大学附属視覚特別支援学校 校長 星 祐子